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論文要旨

Vol. 50, No. 2, pp. 97-106 (1999)

『アジアの移行経済の国内統合と国際化』
石川 滋 (城西大学経済学部)

中国・ベトナムなどアジアの「移行経済」における「移行」がどれだけ成功するかは、旧計画経済の制度・政策の廃棄と併行して、いかに着実に外生的な政策的支援をもうけながら、市場経済の制度が定着していくかにかかる。私はこの定着(市場経済化)過程を経済システムおよび生産力の2つの次元で説明し、それを経済の「国内的統合」と総称する。国内的統合が進展すると、経済は自発的に海外経済との統合により更なる利益を求める。今日の国際情勢の下では、経済政策のglobalizationの潮流が移行経済に対して外生的な圧力として働き、工業国の側で形成された市場ルールの一律の採用を迫る傾向がある。この時には、移行の成功度の大小は、自発的な統合と国際化の間のギャップの大小にかかるようになる。本稿はこのような視点から、中国における過去20年の「移行」の成果を判定し、ベトナムのそれとの比較にふれる。