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論文要旨

Vol. 50, No. 2, pp. 155-168 (1999)

『途上国農村における家計の消費安定化―パキスタンの事例を中心に―』
黒崎 卓 (一橋大学経済研究所), 澤田 康幸 (スタンフォード大学大学院)

本稿は途上国の経済発展とその農村家計の厚生面への影響を、途上国農村における保 険・信用市場のあり方に焦点を当てて分析する。具体的には、パキスタンの農村部に生活する家計の消費が所得変動からどれだけ遮断されているかを、小規模村落調査と全国規模の標本調査データを用い、効率的リスクシェアリングの必要条件を統計的に検討することにより実証的に考察した。その結果、第一に、村落内部で生じるイディオシンクラティックなショックが予想以上に相互に保険されていること、第二に、パキスタン農村におけるリスクシェアリングが広域になればなるほど成立しにくいことが判明した。本稿の分析結果から、村域を越えてリスクをプールすることを推進するような公共投資・公的介入、例えば全国的な作物保険プログラム、洪水や干ばつなどに対する保険や雇用創設事業が重要な開発含意を持つことが示唆された。