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論文要旨

Vol. 50, No. 1, pp. 68-93 (1999)

『アジア通貨危機とIMF』
伊藤 隆敏 (一橋大学経済研究所)

アジアの通貨危機の原因と、IMFの果たした役割を検討する。アジア通貨危機の原因は、(1)ドルペッグ(2)脆弱な銀行システム、(3)巨額な対外短期債務、及び各国事情による。タイの場合には大きな投機が入り、外貨準備を払底させたインドネシア・ルピアの大きな減価は、金融危機と資本逃避、及び政治的リスクにより引き起こされた。構造問題に焦点を絞ったIMF合意では市場の信頼を回復できなかった。韓国の場合は、韓国の銀行が、過大の対外短期借入をしており、その債務が借換え拒否にあったことが、危機の本質であった。この本質的な問題を捕らえていないIMFプログラムでは、効果がなかった。強制借換をないようとする合意は、ウォンの下落を止めた。アジア型危機には、事前に過大な資本流入をチェックする、危機が起きた場合には、大規模の支援プログラムを組むか、逆に貸し手にも損失を負担させるプログラムを組むか、どちらかを選択しないと、効果がない。