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論文要旨

Vol. 50, No. 1, pp. 44-53 (1999)

『異質的なシステムの経済統合―北朝鮮・韓国のケース―』
Marcus Noland (Institute for International Economics (IIE)), Sherman Robinson (International Food Policy Research Instutute (IFPRI)), Ligang Liu (The World Bank)

我々は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国(大韓民国)の経済を分析対象として二国間の計測可能な一般均衡(computable general equilibrium, CGE)モデルである北朝鮮韓国統合モデル(the Korean Integration Model, KIM)を構築する。KIMを用いて北朝鮮と韓国の関税同盟の影響と両経済間の単一為替レートのシュミレーションを、国境を越える要素移動がある場合とない場合とに分けて行う。要素の移動の有無は極めて重要である。もし要素市場が統合していなければ、北朝鮮と経済統合をした韓国へのマクロ経済的影響は比較的小さくなる一方、北朝鮮への影響は大きくなる。単一為替レートと要素市場の統合は韓国における所得と富の分配に大きな影響を与える。もし投資が韓国から北朝鮮へ流出し労働が北朝鮮から韓国へ流出するなら、韓国における所得分配は資本へシフトし労働間においては都市の熟練労働者へシフトする。このようにして韓国における所得と富の不平等の増加をもたらすと考えられる。同様に技術移転の影響も重要である。もし北朝鮮が韓国の技術を吸収するなら貿易財部門は非常に大きな生産性の上昇を経験する。またもし統合が大量の資本流入を伴うなら韓国の実質為替レートは大きく増加し、貿易財部門の生産は落ち込んでしまうであろう。