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論文要旨

Vol. 50, No. 1, pp. 2-10 (1999)

『GATT/WTOルールの経済的意義』
大山 道広 (慶應義塾大学経済学部)

現代の国際貿易制度の基礎にあるGATT/WTOルールの経済的意義を明らかにする。その基本原則である無差別主義(最恵国待遇原則)と相互主義は貿易自由化交渉のルールとして互恵的で、しかも効率的な交渉結果に導く、とはいえ、産業調整費用を考慮すれば、一挙にグローバルな貿易自由化を実行することはかえって望ましくない。 GATT/WTOが関税の存続を認め、漸進適な貿易自由化をはかってきたのはそのためである。産業調整費用が重要であれば、貿易自由化を時間的に遅らせるだけでなく、場合によっては同時に空間的にも限定することが合理的である。GATT/WTOが域外諸国との貿易を阻害しないという条件のもとで自由貿易地域、関税同盟などの地域経済統合を容認していることはこの意味で妥当である。本稿では、関税同盟に関するKemp-Wan定理に別証を与えるとともに、同様の命題が自由貿易地域についても成立することを示す。