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論文要旨

Vol. 50, No. 1, pp. 11-22 (1999)

『国際通貨システムの現状と展望』
河合 正弘 (世界銀行東アジア大洋州値域/東京大学社会科学研究所)

1970年代前半、主要先進国諸国が米ドルに対する通貨ペッグを放棄したことにより、国際通貨システムは全般的フロート制に移行した。しかし実際には、多数の諸国は依然として何らかのかたちで為替レートの安定化政策を続けてきた。一群の西ヨーロッパ諸国は、スネーク制やEMSの下で相互の為替レートの動きを狭いバンドの内部に抑える協同フロート制を経験した後、1999年1月には新通貨ユーロによる単一通貨圏に移行した。多数の発展途上諸国は特定の単一通貨(とくに米ドルや欧州通貨)ないし複数通貨のバスケットに為替レートを安定化させている。数量分析によれば、世界の名目アンカーとしての米ドルの役割は依然として最も大きく、それに欧州通貨と日本円が続いている。ドル圏の経済規模は先進諸国の間で縮小してきたものの、発展途上国(とくにアジア、ラテン、アメリカ、中東)の間ではむしろ拡大してきた。ユーロ圏の規模は、今後、地中海沿岸、中・東欧、一部のCIS諸国で拡大を続けるものと思われる。円圏の規模が拡大するか否かは、アジア諸国が通貨・金融危機の終息後いかなる為替レート制を選択するにかかっている。