HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 72, No. 1, pp. 59-80 (2021)

『国際貿易及び海外直接投資に対する社会的紐帯の誘引効果 --中東欧・旧ソ連諸国の実証研究に関するメタ分析--』
徳永 昌弘 (関西大学商学部)

本稿は,中東欧・旧ソ連諸国における国際貿易及び海外直接投資(FDI)の決定要因として,言語,移民,歴史などの観点から社会的な関係性を広く表現した社会的紐帯に焦点を当て,先行研究が披露する実証結果を統合・鳥瞰するとともに,メタ回帰分析と呼ばれる手法を用いて,研究間の異質性を決定付ける要因や公表バイアスの可能性を検証した.その結果,社会的紐帯変数,とりわけ言語・移民関連変数には確かに貿易・FDI誘引効果は存在するものの,公表バイアスの問題を越えて真の効果が検出された他の決定要因と比べて,その効果サイズは小さいことが判明した.それゆえ,国際経済関係における社会的紐帯の経済的効果を強調することは,その過大評価をもたらす恐れがあるため,慎重に解釈すべき問題である.