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論文要旨

Vol. 64, No. 4, pp. 320-337 (2013)

『社会主義経済システム破綻の政治経済学 —体系的レビュー—』
上垣 彰 (西南学院大学経済学部), 杉浦 史和 (帝京大学経済学部)

本稿は、社会主義経済システムの崩壊を取り上げた先行論文266本のサーベイに基づき、これらを各論文の「属性」とその主張する崩壊「要因」の双方から分析することにより、過去20年の議論のスペクトラムを見晴らしのいい地点から眺望する1つの方法を提示した。本稿が明らかにしたのは、「東欧」を対象とする論文と「ソ連/ロシア」を対象とする論文では、その破綻要因論に関する主張点が、傾向的に異なるという事実である。東欧に関しては、「計画経済の機能不全/予算制約のソフト化と不足/所有権の独占」や「重工業優先、生活水準(消費物資)の低迷、インセンティヴの欠如」を問題視する傾向が強く、ソ連/ロシアに関しては、「国際環境/冷戦・軍拡」、「連邦制/民族問題」、「政策失敗(ペレストロイカの失敗を含む)を取り上げることが多い。東欧に関する論文は、システムに内在する問題を取り上げるのに対して、ソ連/ロシアに関する論文は、内在的要因より外的・偶然的要因が重視されるといえるのである。また、8つの要因に因果連関・層構造を見る立場からすれば、社会主義経済破綻の原因を「計画経済の機能不全」に見つつ、「政策の失敗」を直接のきっかけとして、システムが崩壊したと見る論文が多い。