本稿では,日本において,学校や大学を卒業した直後の就業状態(初職)の違いがその後の人生にどのような影響を及ぼすかを検討する.具体的には,全国レベルのインターネット調査(男性3,117名,女性2,818名,30~60歳)の個票データに基づき,初職の状況が現在の就業,世帯所得などの社会経済的状態や婚姻状態,生活満足度,精神健康に及ぼす影響を分析する.本稿での分析結果によれば,初職が非正規雇用あるいは非就職であれば,現在の就業状態が非正規になりやすいほか,正規以外のキャリア期間が長く,未婚にとどまり,生活満足度が低く,心理的ストレスを感じやすい.また,初職が生活満足度や精神健康に及ぼす影響は,足元の社会経済的状態や婚姻状態によって完全には媒介されず,かなり直接的に作用している.