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論文要旨

Vol. 64, No. 4, pp. 289-302 (2013)

『初職の違いがその後の人生に及ぼす影響 —LOSEF個票データを用いた分析—』
稲垣 誠一 (前一橋大学経済研究所), 小塩 隆士 (一橋大学経済研究所)

本稿では,日本において,学校や大学を卒業した直後の就業状態(初職)の違いがその後の人生にどのような影響を及ぼすかを検討する.具体的には,全国レベルのインターネット調査(男性3,117名,女性2,818名,30~60歳)の個票データに基づき,初職の状況が現在の就業,世帯所得などの社会経済的状態や婚姻状態,生活満足度,精神健康に及ぼす影響を分析する.本稿での分析結果によれば,初職が非正規雇用あるいは非就職であれば,現在の就業状態が非正規になりやすいほか,正規以外のキャリア期間が長く,未婚にとどまり,生活満足度が低く,心理的ストレスを感じやすい.また,初職が生活満足度や精神健康に及ぼす影響は,足元の社会経済的状態や婚姻状態によって完全には媒介されず,かなり直接的に作用している.