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論文要旨

Vol. 63, No. 2, pp. 114-127 (2012)

『公害・環境問題への政治経済学的アプローチ ――都留重人教授の業績をどう引き継ぐか――』
寺西 俊一 (一橋大学大学院経済学研究科・経済学部)

故都留重人教授は、各種の公害・環境問題の解決をめざす政治経済学的アプローチを提起し、当該分野におけるパイオニアの役割を果たしてきた。本稿は、同教授による関係業績をどのように引き継いでいくべきかについて、若干の考察を行うものである。この考察を通じて、同教授による「公害・環境問題への政治経済学的アプローチ」が、(1) 具体的な現実の直視とそこからの理論化、(2) 幅広い歴史的な視野と教訓の重視、(3) 学際的協力による共同調査研究の重視、(4) 国際的な視野と国内外での研究者・専門家・市民相互間での情報交流の重視、という4つの志向性を特徴とし、経済理論的には、(5) 「素材面」と「体制面」との区別と統一という独特な方法論的視点への立脚、(6) 人間福祉の質的充実をめざす課題の提起、(7) 公害・環境にかかわる「権利」「責任」「費用負担」をめぐる法経済学的課題の提起、そして (8) 問題解決の主体である被害者・市民の運動重視と新しい社会規範やライフスタイルの提唱といった、非常に多面的なパースペクティブを有するものであったことを明らかにされている。