本稿の目的は,ロシア全土で実施した大規模インタビュー調査の結果に基づいて,取締役会構成の決定要因を実証的に分析することである。平均的なロシア株式会社の取締役会は,執行役員と社外取締役の比率が均衡した適度に開放的な経営監督機関として特徴付けられる。しかし,実際には,この統計像に近い取締役会を組織する企業はむしろ稀であり,社外役員比率が極端に高いか,逆に経営陣が会長職を含む殆ど全ての役員ポストを占める取締役会を編成する企業が圧倒的に多数派である。本稿の実証分析は,取締役会構成のかかる分極化現象の背景要因として,経営者とその対抗集団の交渉力が,取締役会の人員規模や社外役員比率及び取締役会会長の登用経路に対して,統計的に頑健な影響を及ぼしていることを明らかにした。