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論文要旨

Vol. 57, No. 3, pp. 260-270 (2006)

『1920年代のアメリカ経済の構造変化と大恐慌』
祝迫 得夫 (一橋大学経済研究所)

本論文では,大恐慌の前段階としての1920年代における空前の好景気と,それに伴う経済の構造変化に焦点をあて,アメリカの大恐慌の発生要因に関する最近の研究を概観する.第1に,耐久消費財への支出増加と,それに伴う家計の純債務の増加というミクロレベルの家計の構造変化について,減退を引き起こした可能性について検討する.第2に,19世紀後半から戦間期までのアメリカの金融制度の変遷を要約し,それが戦間期のアメリカ金融システムにおけるディスインターミディエーションに与えた影響について議論する.ディスインターミディエーションと銀行規制の遅れの結果,一部の大銀行を除く銀行部門が弱体化し,それが一連の銀行危機の重要な要因となった.これらの構造変化要因は,1990年代以降の日本経済の停滞要因を分析する上でも,注目すべき点を含んでいる.