本稿は、近年の「日本的経営」離れが、どの世代で最も顕著に起きているのかを、明らかにしようとしたものである。なおその場合、「日本的経営」の本質は、その諸制度や慣行そのものに在るのではなく、それらの背後にある経営理念や価値観、とくに「組織一体感」を強化しようとする考え方にこそ在ると解され、そこに我々は意義を認める。それゆえ独自の職務意識調査に基づき、世代毎に「組織一体感」への支持度が「コミットメント」や「職務満足度」など他の構成概念とも併せ、総合的に計測・評価された。
その結果、(1)しばしば指摘されるとおり、集団主義を嫌う若年層にあっては、企業への帰属感や忠誠心は低く、強い一体感を求める「日本的経営」に対する抵抗感は、最も著しい。(2)しかし若年層だけでなく、40代-50代の高卒一般従業員もまた、すでに昇進ルートから外れただけでなく、不況ゆえなかなか働き甲斐を見い出すことも難しく、市場メカニズムへの猜疑心や職務自体への不満を募らせ、「日本的経営」に対する失望感を強めていることなどが検出された。