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論文要旨

Vol. 52, No. 2, pp. 97-106 (2001)

『日本の金融政策―金融政策の理論と実際―』
齊藤 誠 (一橋大学大学院経済学研究科/経済学部)

本稿では、短期金融市場の流動性保持を目的とした金融調節と、景気制御を目的とした金融政策を明確に区別しながら、日本銀行の金融政策に関する理論的、実証的な課題を系統的に展望している。短期金融市場の流動制保持に関する金融調節に関しては、1997年、1998年の金融危機における日本銀行の金融調節は、短期金融市場の流動制保持に貢献していたと結論付けられる。一方、景気制御としての金融政策については、インフレ率が労働市場の需給に関する情報を十分に集約しなくなったという点が看過され、実質貨幣需要の金利弾力性の顕著な高まりに起因する文化水準の非決定性には十分に対処していなかった。日本銀行は、予期せざるインフレーションや吊目金利の変化による再分配効果について十分に留意した上で、将来の文化水準の経路をアナウンスメントすべきであったと考えられる。