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論文要旨

Vol. 52, No. 2, pp. 157-165 (2001)

『ロシア市場経済化の特異性―商業マージンの分析を中心として―』
久保庭 眞彰 (一橋大学経済研究所)

この10年間におけるロシアの市場経済化プロセスは、周知のように様々な特異な様相を呈している。国内経済では、バータ取引をはじめとする非貨幣取引の蔓延が深厚する中で、顕著な「産業空洞化」と「サービス経済化」が見られる。また、グローバリゼーションが進行する中で、ロシアの国際資本市場への統合は、相対的に僅少な外国直接投資(FDI)流入と膨大なキャピタル・フライトという好ましからぬ2要因によって特徴付けられる。国内市場の特異性と国際市場のそれとをリンクするキイセクターの1つは、ロシアの「サービス経済化」の中核を担う商業部門である。本稿は、産業連関表の付帯表として作成されているマージン・マトリックスを基本データとして利用して、ロシアの商業マージンを分析し、国際比較の中にそれを位置づけることによって、ロシアの市場経済化の特異性の側面を浮き彫りにすることを試みている。