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アムール調査隊の業績シリーズ (一橋大学ニュース表紙 2000 年 9 月)

『勅命により派遣されたアムール調査隊の業績』

1911~1913年刊行、サンクト・ペテルブルク (請求記号 VRc.42-5)

 

1909年10月27日、アムール調査隊ニコライ二世の勅命を受け、内閣会議の決議に従って、翌年派遣された。調査隊の任務として、報告書第1巻に次の4項目を挙げている。

  1. アムール鉄道の敷設地域(バイカル湖東岸とアムール州)を、居住適性の測定と天然資源の解明を目的として、調査すること。
  2. 前述の土地に存在する交通路の改善と新たな建設についての案を作成すること。
  3. アムール鉄道の駅地点と、駅以外の自然状況に基づく地点(航行可能な河川、金坑およびその他の天然資源の産地に近い場所、周囲の土地との交通が便利な場所など)、或いは、都市型の発展が期待されるべき、経済的重要性に基づく地点について解明すること。
  4. アムール鉄道地域の植民事業の最善方法と前述の土地における工業経済の発展に対して、将来的方策を立案すること。

アムール鉄道は、1891年から建設開始され1916年に全線開通した大シベリア鉄道の最終区間にあたる。この数十年間のロシアは国内外において緊迫した情況にあった。1894年、最後の皇帝ニコライ二世が即位した年には、独・仏とともに対日三国干渉を行い、1898年にロシア社会民主労働党第1回大会が開催され、1904年に日露戦争に突入した。敗北した1905年には首都ペテルブルクでストライキ中の労働者達への発砲事件(血の日曜日事件)が起こり、この事件を発端としてロシア革命が全土を駆け巡る。

まさにこの変革期の最中、1905年にアムール鉄道の建設が開始され、その数年後に調査隊が派遣された。調査隊は、土壌・植物学、農学、経済統計学、水力工学、動物工学、森林学、道路・地理学など、各分野のスペシャリストたちによって編成された。この鉄道工事において、アムール川に26,000メートルの橋が架けられ、世界初の試みとして永久凍土の地盤のなかにトンネルが掘られた。

ロシア人の調査の徹底ぶりは資料の序文からも伺える。「アムール州の農民とコサックの世帯の統計学的経済調査」は1910年、アムール調査隊統計学部隊によって行われ、その資料は4冊にわたる。実際の現場の仕事量は予定されていた仕事量のほぼ2倍になった。調査対象となる世帯は予定の12万世帯を上回り、21万世帯を越えたため、調査に要する時間を十分に取ることができなかったと嘆いている。また最初の調査地域で、回収した戸別調査カードの結果を見て新たな設問が必要と判断したのだが、その地域における追加調査は不可能なので、やむを得ずその地域を分離して資料編纂のときにより詳しく説明をした、とわざわざ釈明している。6月末に開始し、全ての土地調査が終わったのは10月末、調査されなかったのは、3つのコサック村のみであった。アムール川の流氷が始まったためこの地域に入ることは非常に困難を伴うから、というのがその理由であった。

経済研究所資料室に所蔵する30冊(1)~(30)を以下に紹介する。

『勅命により派遣されたアムール調査隊の業績』
1911~1913年刊行、サンクト・ペテルブルク VRc.42-5

(1)Вып. 1 1910年のアムール調査隊の公式報告
(2)В.1の付属1:極東における緊急処置文書
(3)В.1 の付属2:アムール鉄道に依存している地帯40ヴェルスター(約42.6k)の地図のための説明書
(4)В.1 の付属3:ザバイカルスカヤ州、アムール州、プリモールスカヤ州の地図作成のための説明書
Вып.2 アムール州におけるコサックと農民世帯の統計学的経済調査資料集
(5)т.1, ч.1 村落ごとの一覧表
(6)т.1, ч. 2 組み合わせ表とグループ表.予算.
(7)т.2, ч.2 テキスト採掘法
(8)т.4
(9)т.5 ザバイカルスカヤ州における農村の農業以外の生業と村の漁業(1910年のアンケートによる)
Вып. 2 ザバイカルスカヤ州路線上の鉄道居住区.1910年の人口調査による統計学的説明と資料.
(10) т.5, ч.1-a
(11) т.5, ч. 1' (12)Вып.5プリアムーリレにおける農耕の開拓意義
(13)Вып.5 の付属:アムール州とプリモールスカヤ州の村落における土地分割と開発の条件
(14)Вып. 6 アムール州における農業経済学的水力工学の課題
(15)Вып. 7, Ч.1.アムール州における畜産に関する資料.畜産学部隊の報告
(16)Вып. 7, Т. 2.アムール州における畜産と飼料備蓄量
(17)Вып.8 極東における商工業の情況と需要
(18)Вып.8 の付属: 一般的な穀粒の化学的成分と分析に関わる、ウスリースク地方とアムール州の小麦とライ麦の粒について
(19) Вып.8 の付属:極東におけるシベリア産パンと肉の供給に関する問題についての資料
(20)Вып.9 アムール州とプリモールスカヤ州における社会・行政制度に関わる地方自治経済
(21)Вып.10 プリモールスカヤ州ニコラエフスキイ地区の需要
(22)Вып.11 プリアムーリエにおける中国人、朝鮮人、日本人
(23)Вып.11 の付属:プリアムーリエにおける朝鮮人の問題
(24)Вып.11 の付属:Хейлунцзянская地方における中国人植民地化の地図
(25)Вып.12 の付属1:北バイカル鉄道の建設についての問題に関する資料
(26)Вып.13 極東における狩猟業についての問題に対して
(27)Вып.14 1910年の地質学部隊の報告
Вып.16 1910年の植物学的追跡
(28)Т.1 ヤクーツク州オレクミンスキイ区のトゥンギール川上流流域の植物
(29)Т.2 ザバイカルスカヤ州北東部の植物研究に関する資料
(30)Вып.17, Ч.1 地質学部隊の報告

(左)Вып. 7, Ч.1.アムール州における畜産に関する資料.畜産学部隊の報告.より
(右)Вып. 7, Т. 2.アムール州における畜産と飼料備蓄量.より