トランス・ポジショナルなケイパビリティ指標作成に向けた国際共同研究

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研究者招聘実績 - 平成26年度


招聘者: Sabina Alkire

(Director of Oxford Poverty and Human Development Initiative (OPHI), University of Oxford (UK))

派遣先

一橋大学

具体的な研究活動

 アルカイア教授はオクスフォード大学の多次元貧困指標(MPI)開発チームのリーダーである。ケイパビリティ・アプローチに基づいて具体的な多次元指標を作成し(いわゆるAlkier-Foster Method)、人々の福祉を評価するとともに、現実の政策に反映させるという包括的研究の最前線を担っており、ケイパビリティ研究の中心的人物のひとりである。MPIを批判的に検討することは、本プログラムにとって必須の課題であり、本研究が目指す普遍的なケイパビリティ指標の作成に向けてきわめて重要な知見を提供するものと期待されている。

具体的な成果

 アルカイア教授が開発に携わった多次元貧困指標(MPI)について、開発過程で直面した概念的・技術的・政治的課題のエピソードなども交えながら、包括的な説明がなされた。普遍的な指標の作成にとって、データの利用可能性が特に厳しい制約になることが予想されるが、多次元指標の採用によって(一次元指標では見過ごされる)人々の福祉の多様な側面が把握される点はきわめて重要である。 とりわけ、標準的な所得・消費の指標で測った貧困率と多次元指標で測った貧困率が似通っている場合でも、貧困とされる家計・個人に大幅な相違が生じているケースが示され、本研究が目指す普遍的なケイパビリティ指標の作成にたいしても重要な示唆が得られた。次元毎の閾値(threshold)や次元間の重み(weight)の設定など、技術的な課題についても重要な検討課題が浮き彫りとなった。