論文・著書 2001

外資系企業の活動および市場集中度:
事業所・企業統計調査個票データにもとづく3 桁業種別統計

深尾京司 ファカルティフェロー (共著 伊藤恵子)

2001/10(ESRI Discussion Paper Series No.5)

本文(PDF/314K)


要旨
対日直接投資の重要性にもかかわらず、日本の対内直接投資統計には米国のそれと比較して多くの問題点がある。我々は、『平成8年事業所・企業統計調査』個票データを独自に集計することによって、日本における外資系企業従業者数を3桁業種別に算出した。我々の作成した新統計によると、非製造業では、外資比率3分の1超の外資系企業従業者数が1996年時点で30.8万人であった。この数字は、経済産業省調査で報告されている数字のほぼ5倍である。製造業では、外資比率3分の1超の外資系企業従業者数が1996年時点で17.6万人であり、こちらは経済産業省調査よりも10%ほど多いだけであった。つまり経済産業省調査は、特に非製造業で外資系企業の活動を大幅に過少評価していることになる。我々はまた、日本における対内投資と米国における対内投資とを3桁業種レベルで比較している。  我々の業種別統計を用いて、日本における外資系企業の活動シェア(「外資系企業浸透度」と呼んでいる)の決定要因を説明するモデルを推定した。その結果、日本における外資系企業浸透度の決定要因は、製造業と非製造業とでは大きく異なることが分かった。製造業では経営資源の重要性や要素集約度の要因が有意であったのに対し、非製造業では政策的な要因が有意であった。この結果は、非製造業における対内直接投資規制の緩和や公的事業所の民営化を進めることによって対日直接投資が増える可能性を示唆している。また、系列については製造業・非製造業ともに有意ではなく、系列は対日直接投資の重要な阻害要因とは言えないとの結果を得た。  また、『事業所・企業統計調査』個票データを用いて、3桁業種別に市場集中度や事業所規模中位値に関する統計も算出した。これらの統計は、産業組織の実証分析等に有用であろう。
論文・著書の目次
トップ