王立国際問題研究所(RIIA)が立地するSt. James's Square の近隣には100年以上の伝統を持つ英国風クラブがいくつもあり、宿泊したのは会員の多くが陸海軍人というIn & Outというクラブであった。以前訪問する機会のあった、Athenaeumと比べると、やや現役感の薄いクラブだったが、1ページにわたるドレスコードがウェブで公開され、正面入り口から入る時は、少なくともダークスーツとネクタイ着用、という規定は、大陸欧州と比べて服装に厳しい英米の慣習の起源を見るようで、面白かった。
帰国直前に、パリのテロ事件があったが、英国の人達は、被害者を深く悼みながらも、テロの脅威に屈して日常生活を変えることは決してしない、という決意が感じられた。
英国の友人に勧められて、St. James's Squareの直ぐ北側、トラファルガー広場に近い、Water Stonesという書店に夕方寄ってみた。ビル全体を占める大型書店だが、アマゾン時代に対抗してか、楽しく本を見せることに徹しており、クリスマスの飾り付けとも相まって、時間を忘れて楽しんだ。Letters of Notesとその続編という、ジェーン・オースティンからアインシュタインまで、書簡のオリジナル(スケッチ等を含めて)とそのタイプ版を載せた本(フランス語で書かれた王族の手紙には英語訳もついている)が素敵で、こんなのが日本にあれば(もちろん、漢詩やハングルには翻訳を付けて)是非買いたいと思った。あと、ちょうどサイン会があったようで、Tim MarshallというジャーナリストのPrisoners of Geographyという啓蒙書が著者のサイン入りで平積みになっていた。これは東ヨーロッパ平原、中東のサイクス・ピコ線、朝鮮半島と日本、中国中原、アフリカ、南アメリカ、北米大陸、と世界の地理を大掴みに捉え、地政学的な要因が遠い過去から現在まで、どのように各地域の国のかたちと紛争を左右してきたかを分かりやすく説明している。これを機中で読みながら、帰ってきた。
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一橋大学経済研究所 深尾研究室