研究計画

研究の目的

わが国における企業と企業の間のネットワーク,銀行と企業の間のネットワークは,過去四半世紀の経済停滞期に大きな変化を余儀なくされ,現在,再編の途上にある。日本経済の持続的な成長を実現するには,効率性と安定性に富む産業・金融ネットワークを再構築し,企業や銀行の「つながり力」を高めることが急務である。

日本経済の企業と企業の間,銀行と企業の間のネットワークは,過去四半世紀の経済停滞の時期にその機能を著しく低下させた。第1に,病に陥った企業や銀行とは本来ただちに関係を絶つべきであるが,多くの企業や銀行はその切り替えができないままに取引を続け,やがては健全な経済主体にまで病が伝染してしまった。生産性の低い大企業に対する大銀行の追い貸しが典型例である。第2に,企業や銀行の破綻が多発する中で,各経済主体は互いに取引相手の支払能力を疑うようになり,相互不信の状況が生じた。企業間信用の縮小などがその例である。こうしたネットワークの機能低下が経済主体の生産性を低下させ,それが経済停滞を長期化させる一因となった。本研究の目的は,こうした理解をデータを用いて検証すると同時に,各経済主体の協調的な行動により高い生産性,高い経済厚生を実現するというネットワーク本来の機能を取り戻すにはどうすればよいのかを考察する。

経済主体間の「関係性」に関する議論はマクロ経済学や金融論などでこれまで数多くなされてきた。金融論のメインバンクやリレーションシップ・バンキングといった文脈での議論がそれである。本研究では,関係性に関するこれまでの研究蓄積を踏まえつつ,それを「ネットワーク」という新しい視点で捉え直すことを試みる。具体的には,企業と企業の間,企業と銀行の間,銀行と銀行の間の関係をネットワークと捉え,ハブ企業と周辺企業から成る構成などその基本的な性質を調べる。その上で,それがどのようにして誕生し時間とともにどう変遷してきたか,その変遷が何を契機として生じたのか(例えば法制度の変更や競争環境の変化など)をデータを用いて明らかにする。さらには,生産性の高い企業や速い成長を遂げる企業,プロダクトイノベーションの盛んな企業がネットワーク上でどのような位置にいるのか,幼少企業や停滞企業がネットワーク上でどのような扱いを受けているのかといった,ネットワークと企業発展の関係について明らかにする。そうした定量的な評価を踏まえ,ネットワークの変化が長期停滞とどのように関係していたのか,効率的で安定的なネットワークとはどのようなもので,それを構築するにはどのような制度や環境の整備が必要かを考察する。

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研究の意義

研究方法

本研究が目指す貢献

研究計画一覧

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