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オピニオン

●「コルカタ便り(4)」2010年2月9日

 インドは中国と並んで世界経済の牽引車となっています。その中心がバンガロール(Bangalore)のIT産業にあることは周知の事実です。トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』の冒頭に出てくるインドのIT会社インフォシス(Infosys)もこのバンガロールの郊外に広大なキャンパスを構えています。今回はまずこのインフォシスを訪問して、会社の経営方針や事業の方向性について聞いてみました。それと同時に元インフォシス社員や周辺の会計関係者、経営コンサルタント、メディアの人々にもインドのIT産業やインフォシスの国内での評価や将来性について聞いてみました。

 日本やアメリカでIT産業といえば、コンピュータや関連機器の製造業(IBM, Dell, HP, アップル、富士通、ソニー、日本電気、パナソニック)およびその中で使うソフトウェアの開発会社(マイクロソフト、グーグル、ヤフー)などを想像しますが、ここインドではIT製造業はほとんどなく、もっぱらITソリューション業、すなわちオーダーメイドのソフト開発やソフト関連のコールセンター、単純な図表、プレゼンテーション資料作成、会計・税務処理の下請けなどを行っているようです。インフォシスはIT化が進んでいないインド国内からの注文は収益の1%以下で99%以上は海外からのものであるということでした。

 もちろん、このようなITソリューション系の産業がインドの成長エンジンになっていることは事実ですし、産業のあり方としてはトーマス・フリードマンが指摘したように、グローバル化の利点を最大限に生かしており極めて面白く思いました。しかし、地元経済には従業員の消費需要や税収はもたらされるものの、大きな乗数効果を生むような、あるいは川上産業、川下産業を派生的に生み出すような産業構造にはなっていないがために、インド経済全体の成長、インド全土におけるインフラストラクチュアの充実にはなかなか結びつかないだろうという印象を受けました。

 それでもコールセンターに通う女性労働者の夜勤交代やIT産業ブームに乗って海外から戻ってくる高給取りのインド人技師、経営者のためのデザイナー住宅の建設現場などを見学すると、確かにダイナミックに経済が変化していることを実感しました。少なくとも、バンガロールの一部の地域はインドにいることを忘れてしまうほど近代化していることは事実でした。

   

北村行伸@コルカタ


インフォシスのキャンパス(左)とインフォシスでのインタビュー(右) kolkata4-1 kolkata4-2
ヒンドゥー新聞編集長とのインタビュー(左)とバンガロールでの会食(右)  kolkata4-3  kolkata4-4