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オピニオン

●「コルカタ便り(2)」2010年2月6日

 2月5日の早朝1時頃にコルカタに着き、午後3時には、日本の公的年金についてのセミナーをインド統計研究所でやりました。30名ぐらいの参加者が集まり、議論は結構盛り上がりました。これで晴れて、この研究所の科学訪問者(scientific visitor)というポジションをもらうことが出来ました。

 ホテルから研究所までは通常は20分ぐらいだそうですが、金曜日ということもあり、異常な交通渋滞に巻き込まれ3時間ぐらいコルカタ市内の路上で足止めをくいました。この交通渋滞のすごさは特筆する必要があると思います。

 アジアではバンコクやジャカルタの交通渋滞についてよく書かれますが、このコルカタの渋滞はまさに異次元の現象だと言えます。先ず、交通手段として路上を走っているものが自動車、トラック、バス、路面電車、三輪車(リキシャ)、自転車、人力車などであり、路上を動いているものは、それに加えて、人間、牛、ヤギ、犬、鶏、猫など。しかも、これらの後者のグループは交通ルールは完全無視して車道に入ってきます。さらに驚いたのは多くの車が逆走してくることです(通行方向を全く無視して走ってきます)。各自は少しでも早く目的地に着きたいという理由で行動しているのですが、交通ルールをほぼ全員が無視することで交通渋滞を悪化させ、その結果として、すべての人にとって時間の無駄が大規模におこっているようです。経済学的に言えば、個人的合理性を集計した結果、社会的に非合理な結果が生まれているということでしょう。先進国では基本的に交通ルールを守ることで運転している人が他の車の動きをある程度予測でき、その結果として、無駄な摩擦を起こしたり、予備的行動をとる必要がなくなるように思います。問題はどうしてコルカタ(インド)の人が交通ルールを守れないかということです。表面的にはインド人は個人主義が強く、自己目的を強烈に主張することによって、このようなカオス(混沌)が生じていると解釈できますが、その背後には、他者が交通ルールを守ることが信じられないという問題があるのではないかと思います。すなわち、自分が交通ルールを守っても、他人がそれを破れば、結局、破った人が得になり、ルールを守った自分は損になると信じれば、結局、すべの人がルールを無視して走行を始め、道路上では大混乱が起こるということなのではないでしょうか。

 もちろんコルコタで自動車を運転する人が全て交通ルールを無視しているという訳ではありませんが、運転免許のいらない自転車や人力車はルールなしの状態にあるし、路上をうごめく人間や動物達はこのカオスにさらに拍車をかけるスパイスとなっています。コルカタ滞在1日目にして経験したことはこのすさまじい交通渋滞でした。また、その結果として排出される排気ガスの汚染も相当ひどく、鼻とのどをすぐに悪くしてしまいました。

                                          

北村行伸@コルカタ


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