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オピニオン

●「ストックホルム便り(1)」2009年9月2日

 ヘルシンキから移動してストックホルムに9月1日に着きました。今回の滞在先はKTH Royal Institute of Technology (王立工科大学とでも訳すのでしょうか)という大学です。私の友人がこの大学にスタッフとして所属しているので、滞在先として選びました。キャンパスはストックホルム市内にありますが、比較的広く、印象としてはアメリカの大学のキャンパスに似た感じです。私が滞在している経済学部は7年ぐらい前に創設されてスタッフも10人程度、博士の学生が6人と、こじんまりとした陣容ですが、教育を研究開発、技術革新、経済成長、起業家学などの分野に絞り込んでおり、そこで比較優位を得ようとしているようです。授業は英語で行われており、ヨーロッパ諸国やアジアからの留学生も多いように見受けました。私はセミナーを1回開く予定ですが、あとは教育の義務はないので具体的な学生の水準などはわかりません。9月に入って大学がようやく始まったところらしく、新入生らしい初々しい学生も沢山見かけます。

 私のストックホルムでの目的はスウェーデン経済を理解すること、年金や雇用などの労使関係、社会保障とりわけ公的年金における政府の役割について調べること、スウェーデン中央銀行の金融政策について意見を聞くこと、あとはフィンランドと同様に社会全体を観察して、気になったことを現地の人に聞いてみたいと思っています。個人的には19世紀末から20世紀初めに活躍したスウェーデン人経済学者Knut Wicksell について調べたいと思っています。

 9月2日には大学に行き、昼食を早速同僚の先生たち(Bjorn Harsman, Hans Loof, Gustav Martinsson 他)ととりました。初対面にも関わらず、日本の選挙結果の分析から株価への影響、少子化対策、日本企業のR&D支出の分布などに関する質問が矢継ぎ早に出されて、こちらが質問する機会は次回に回されてしまいました。フィンランドと比べると日本の政治経済に関する情報がはるかに知られているのには驚いてしまいました。やはりストックホルムの方が国際都市であり、こちらの大学教授の方が国際情勢に敏感に反応しているということでしょうか。ついでに昼食のメニューも、フィンランドよりかなりイギリスやフランスなどの西ヨーロッパ諸国のものに近く、カロリーや脂肪分も低めに抑えられているように思いました。こうして比べみると、フィンランドは北欧の中でも実はかなり田舎というか異質というか、独自の文化や社会をもつ国であることが実感されます。ストックホルムは今回で3回目の訪問ですが、今回は1ヶ月間滞在するので、スウェーデンについてもより深く理解できればと思っています。

 宿舎として滞在しているのは旧市街のガムラスタンの南側のセーベルマルム島です。ここの印象としてはパリの6区(カルチェラタンとして知られている地域)のように芸術家や学者・学生が集まっており、気の利いた店や飲食店があふれています。ストックホルムのボヘミアン的な雰囲気を味わうにはいい場所だと思います。ヘルシンキとは違い街の規模が大きいので目的地には基本的に地下鉄で行くので早速1か月分の定期を買いました。料金は690クローネ(約9000円)でした。1回の料金が40クローネなので17回分が1ヶ月分の料金なのでこれは買い得です。

 これからできるだけ沢山見聞きしたことを報告していきたいと思います。

北村行伸@ストックホルム

 

KTH王立工科大学のキャンパス(右)(左)  stockholm1-1  stockholm1-2
キャンパスの彫刻(左)とKTH王立工科大学の校章(右)  stockholm1-3  stockholm1-4