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オピニオン

●「ヘルシンキ便り(6)」2009年8月5日

 7月31日から8月3日に少し長めの週末休暇をとって、サヴォンリンナ(Savonlinna)、ヨエンスー(Joensuu)という北カレリア地方の主要都市に行ってきました。最大の目的は、サヴォンリンナ・オペラ・ファスティバルでオペラを見ることです。これは、日本ではほとんど知られていませんが、家内がオペラの本を読んでいて、滅多にいけないオペラ祭として紹介されていたのを見つけて、我々のフィンランド滞在と日程が重なっていたことから、行くことに決めたものです。

 チケットの入手はインターネットで出来るので、チケットだけは日本にいた6月中に入手し(電子チケットで印刷したものを持って行けばそれでOKなので、郵送してもらうことも、どこかのキオスクで入手するという必要もありません)、滞在先のホテルの予約だけをこちらに来てからしました。これも、サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルと連携しているサヴォンリンナ・トラベルという旅行代理店にメールを出して、空いているホテルを見つけてもらうことが出来たので、特に大変ではありませんでした。最初は直接、サヴォンリンナの主要ホテルに電話をして予約をしようとしたのですが、これは全て満室で予約できませんでしたが、夏期休暇滞在用のペンション・ホテルのようなところが見つかり、結構快適でした。

 さて、サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルですが、1912年にフィンランドのオペラ歌手アイノ・アクテが始めたものだそうです。我々が見回した感じでは、ほとんどの観客がフィンランド人で、外国人は極めて少ないように思いました。もともと、サヴォンリンナ自体が、フィンライドでは有名な夏の避暑地であり、その避暑に来ているフィンラド人を対象にオペラ祭が始まったものなのでしょう。オペラの会場はサヴォンリンナにあるサイマー湖上に1457年に建設された古城オラヴィ城です。古城の中庭をうまく利用してオペラの舞台と客席を特設し、舞台設定はほぼ固定化していますが、歴史的な古城の設定を最大限に生かした演出になっています。詳しくは解りませんが、毎年担当するオペラ座が変わり、最低限1作品はフィンランド人の作曲によるフィンランド語オペラを上演することになっているそうです。今年の担当はイタリアのパレルモにあるマッシモ座(Teatro Massimo)でした。我々が見たのは、7月31日がベリーニ(Vincenzo Bellini)の『清教徒』(I puritani; The Puritans)、8月1日がマスカーニ(Pietro Mascagni)の『カヴァレリア・ルスティカーナ』(Cavalleria rusticana)とレオンカヴァロ(Ruggero Leoncavallo)の『道化師』(Pajatso; Pagliacci)でした。3作共に、イタリアのグランドオペラで、聴かせるところ、泣かせるところを良くも悪くも体現した作品でした。マッシモ座の歌手達はかなり上手でしたが、なによりも合唱の力強さが際だっていました。他の日に上演していた演目は、『メフィストーフェレ』(Mefistofele)、『トゥーランドット』(Turandot)、『ランメルモーのルチア』(Lucia di Lammermoor)などのイタリアオペラの他に、『The Seven Dog Brothers』というフィンランド語のオペラが含まれていました。

 オペラを見終わってから、ヨエンスーという街で一泊しました。ヨエンスーから車で1時間ぐらいのところにコリ国立公園(Koli National Park)というところがあります。ここはピエリネン湖を見渡せる絶景で、フィンランドを代表する作曲家シベリウスが交響詩フィンランディアの着想を得た地としても知られています。フィンランドはヘルシンキから10kmも離れれば、あとは森と湖が延々と続く景色ですが、このコリ国立公園にまで来ると、その景色の壮大さや静寂さが際だっていることに気づきます。これは足を伸ばして見に来た甲斐がありました。

 

 

北村行伸@ヘルシンキ

 

マッシモ座の大団円(左)とオラヴィ城(オペラ会場)(右)  helsinki6-1  helsinki6-2
オラヴィ城からみた景色(左)とコリ国立公園(右)  helsinki6-3  helsinki6-4