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オピニオン

●「ヘルシンキ便り(3)」2009年7月19日

 フィンランドは北緯60−70度にあり、国土の4分の1が北極圏に属している。日本では稚内が北緯45度あたりだから、フィンランドは相当北に位置している。とは言え、メキシコ暖流のおかげで、思っているほど冬も寒くないらしい。今は夏だが、日本の夏とは比べものにならないほど快適。このところの平均気温は22度ぐらいで、海風が清々しく、湿気はほとんど感じられない。暑さで汗だくになるということは、激しいスポーツでもしなければ皆無である。

 緯度が高いということは、夏は日が沈まず、冬は日が昇らないことを意味している。北部のラップランドでは一日中日が沈まない「ミッドナイト・サン」が見られるし、ここヘルシンキでも10時頃までは確実に明るい。夜中でも日本の夜のように暗くはならず、なんとなく薄ら明るい感じである。冬至のころは逆に北部では日が昇らない「カーモス(極夜)」が続くそうである。この時にオーロラがみえるので、観光客も沢山くるという話である。

 フィンランドの国土の68%が森林で、10%が湖沼や河川、湖は19万個もあるそうだ。まさに森と湖の国である。今日は、ヘルシンキの自然環境から考えたことを少し書いてみたい。ヘルシンキはフィンランドの首都であり、この国の政治経済文化の中心地であるが、人口59万人ぐらいだそうである。これは日本の政令指定都市をはるかに下回り、市町村人口ランキングの21位鹿児島市(60万人)、22位船橋市(57万人)あたりに相当する規模だ。私の地元の千葉県船橋市と比べると、建物も立派だし、公園やオペラ座、オリンピック競技場なども充実している。人口密度が日本の市町村と比べると低いのではるかにゆったりした感じではあるが、やはり大都会という感じではなく、地方の小都市といった感は否めない。

 フィンランド中央銀行は、どの国の中央銀行もそうであるが、街の中心に位置しており、私が利用させてもらっている宿舎もすぐ近くにあるのだが、宿舎を出ればすぐ観光コースになっている。町を抜けるのに1km、港沿いのターミナルを左手に見ながら、海岸沿いに2kmほど行くのがこちらの同僚に教えてもらったヘルシンキで最高の散歩・ジョギングコースである。日没の頃に、走るでもなく、歩くでもないスピードで進んで行くのはなんとも気持ちがいい。往復で6kmぐらいなので1時間から1時間半の散歩コースになる。映画『かもめ食堂』に出てきたカフェ・ウルスラはカイヴォプイスト公園の中にあり、散歩の途中に出くわす。同僚曰く、そこでお茶を飲むのではなく、さらに歩いて公園の端にいくとアイスクリームショップとイチゴやブルーベリーを売っているおばさんがいるからそこで美味しそうなものを買って、ゆっくりと海岸で食べるのが最高だそうで、私もそれを忠実に実践している。

 さらに足をのばして、本当の森と湖の環境を愉みたければ、24番線のバスの終点にある国立公園のセウラサーリ島に行くのがいいだろう。ここまではヘルシンキ市街のスウェーデン劇場前から15分ぐらいである。この島の中にはフィンランドの各地から集められた民家や教会が87棟移築してあるセウラサーリ野外博物館がある。公園の中を森林浴しながら、歴史的な建物を見て回るのも楽しい。この公園でも多くの人の過ごし方は、公園内の適当なビーチや岩の上の空き地を見つけて、そこにタオルを敷いて、のんびりと昼寝をしたり、恋人同士、あるいは友人と話をするという感じである。私は日曜日と水曜日に行ってみたが、日曜日よりウィークデイの仕事の後、5時から7時ぐらいの時間帯の方が、人出が多いように思った。日曜日の昼間に熱心に建築物を見ているのは、私のような観光客ぐらいで、ヘルシンキの住民にとってはこの公園は憩いの場所なのであろう。2回目に行ったときからは、私も憩いの場所として、のんびりと読書やスケッチをして過ごした。この公園には多くの渡り鳥やリスなどがいて、人なつこく近づいてくるのにも癒される。

 

北村行伸@ヘルシンキ

 


セウラサーリ公園とその野鳥 helsinki3-1 helsinki3-3  

  カイヴォプイスト公園周辺のジョギングコース

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