Top

オピニオン

●「ヘルシンキ便り(1)」2009年7月13日

 今年はサバティカルをとっています。サバティカルというのは大学用語で研究休暇とでも言うのでしょうか、学務や教育から解放されて、研究に専念できる期間という意味です。この夏は、このサバティカル制度を利用してフィンランドとスウェーデンに滞在します。まず7月1日から8月31日までフィンランドのヘルシンキにあるフィンランド中央銀行の研究局に滞在しています。9月1日から9月30日まではスウェーデンのストックホルムにあるRoyal Institute of Technology(技術大学)に滞在します。

 さて、ヘルシンキに到着してすでに2週間近くたちましたので、こちらから初めてのお便りをします。

 滞在先のフィンランド中央銀行ですが、フィンランドは北欧では唯一ユーロ圏に入っている国で、金融政策の決定はフランクフルトのヨーロッパ中央銀行(ECB)で行われています。フィンランド中央銀行の職員も多くは交代でフランクフルトへ出向しているようです。こちらで面白い研究をしていて、注目していたJuha Kilponenも私と交代するようにECBへ出向して行きました(これからたっぷり夏休みをとった後ですが)。また、ECBにいるフィンランド人も夏休みに帰国するついでにフィンランド中央銀行の研究局に部屋を借りて研究を続けたりしています。また、現在はイタリアのパドヴァ大学経済経営学部のEfrem Castelnuovo氏、ニューヨークにあるRensselaer Polytechnic Institute のIftekhar Hasan氏が私と同じように客員研究員として滞在しています。

 中央銀行の職員数ですが、ユーロ参加前は1000人ぐらいいて、支店もかなり在ったようですが、ユーロ参加後は500人程度に減り、支店も3店残すだけということのようです。お昼は銀行の食堂で食べますが、夏休み中ということもあるのでしょうが、せいぜい200人ぐらいの人が交代で食事をしているという印象です。フィンランド人はほぼ全員が英語を話せますので、フィンランド語がわからなくても、問いただせば英語で答えてくれます。食べ物は全般的にはシンプルで美味しいですが、飲み物でジュースだかお茶だか、漢方茶だかわからないようなものが出てきたり(いつもあるので定番の飲み物なのでしょう)、いろいろと私の好奇心をかき立てるものが出てくることも事実です。

 フィンランド中銀の研究部は2部制になっており、ひとつがマクロ金融を研究する部門で、もうひとつが移行経済を研究する部門です。移行経済でもロシア経済と中国経済に特化しており、この2国について研究を行っているようです。中国経済にはヘルシンキ大学修士をとった中国人とアメリカの大学に籍のある中国人(ともに女性ですが)がいます。私がアジア系ということでしょうか、それとも高齢者ということでしょうか、親切にしてくれています。

 仕事時間もフレックスタイムになっており、コアタイムは10時から3時ぐらいでしょうか、4時には帰宅する人がかなり多いように思います。われわれ客員研究員は宿舎に帰っても食事をするくらいで他にすることもないので6時から7時頃までは銀行に残っています。

 こちらでの研究の動向やフィンランド社会、経済、政治の話は追ってお伝えします。

北村行伸@ヘルシンキ

 
フィンランド中央銀行正面と研究局ラウンジ helsinki1 helsinki2