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オピニオン

●「国債の個人保有はなぜ少ないのか」2001年8月8日

 2001年8月8日付け日本経済新聞によれば、財務省は国債の宣伝・広告活動を強化し、個人の国債保有を促進する意向であると報じられている。実際、金融の教科書では国債は元本も金利も保証されており、しかも発行主体が政府であることから、最も安全な資産として取り扱われている。また、家計の貯蓄行動を見ると、我が国の家計は安全志向が強く、金融資産の半分を定期預金・郵便貯金などで保有している。にもかかわらず、最も安全な資産であるはずの国債保有残高は2.5%(2000年度末)に過ぎないのである。これはなぜだろうか。確かに、現金と比べた場合、国債を満期前に現金化すると、流動性リスク等から、元本割れすることがあり得る。しかし、ある程度の長期投資と考えて満期まで待てば、少なくとも定期預金よりは高い金利が確保できるし、元本は保証される。問題は流動性リスクというよりむしろ取引金額にあるのではないだろうか。現行では5万円から購入できるが、小額貯蓄者にとってはこの最小取引単位は高すぎる気がする。因みに、アメリカの財務省は少額貯蓄向けの国債(Saving Bond)を50ドル、75ドル、100ドル、200ドル、500ドル、1000ドル、5000ドル、10000ドルの取引単位で販売しており、しかもそれぞれの国債毎にアメリカの現代史上の有名人の名前を冠している。因みに50ドル貯蓄国債にはヘレン・ケラーが使われている。国民が直接国債を保有することは良いことだと思うし、高齢化社会において安全な資産の運用先として極めて重要であろう。しかし、それならば尚のこと、財務省は国債の商品性や購入の容易さ(売買単位の引き下げ)などに気を配るべきではないだろうか。最小単位を低くすると金利払いなどの事務が煩雑になり、それに伴うコストに見合わない等の反論が理財局や日銀等から出るかもしれないが、このような単純計算こそITの力が最も発揮される部門であるのだから、それらの問題は回避できるはずである。より国民にフレンドリーな国債を出すという観点からこの活動を考えて欲しい。