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オピニオン

●「ケニア便り」1999年3月21日

144歳のおばあさんがケニアの村で発見されました。イタリア人の人類学者が、そのおばあさんの記憶をチェックしたり村人に聞いて調査した結果、1855年生まれということが確認されたそうですが、とにかく出生記録がないのでギネスブックに載ることはないそうです。TVで見たのですがたしかに結構なおばあさんです。金さん銀さんよりはだいぶ年をとっているように見えますが、本当のところは本人も分かっていないようでした。

ケニアの商業、金融業はインド人が握っています。これは、平均的ケニア人の暗算能力をみるとわかるのですが、3桁の暗算はまずできません。彼らはのろのろと紙に書いて電卓で計算しています。インド人はその点、計算能力はかなり高いので、同じ社会で商業活動をすればインド人が勝つのが当たり前のような気がします。インド人は消費税のごまかし方などにもたけていて、商売上手という感じです。しかし、考えてみれば、東南アジアでは金融・商業は華僑が握っているわけですし、ヨーロッパ、アメリカではユダヤ人が支配しているわけですから、もともと商業(つま交易ということ)や金融(つまり高利貸しということ)はその社会の支配者が行うのではなく、むしろ外部からきた異邦人が行うというのが、世界では当たり前なのかもしれません。日本の金融や商業もユダヤ人やレバノン人に任せたほうがいいのかもしれません。

ケニアには50を超える部族があり、それぞれの部族によって言葉も習慣もずいぶん違います。昼食時の話題は部族間の習慣の違いを私に面白おかしく説明してくれることが多いです。ある時、結婚の話になり、いろいろ部族間で結婚の儀式や、手続きが違うという説明の後、特に女性の側の両親が結婚に反対した場合の、なだめ方などが面白く、仲介をたてて認めてもらうというものから、駆け落ちして子供を作って、徐々に懐柔していくというものもありましたし、駆け落ちのお詫びの儀式というものもあるそうです。でもつまるところ、オラの村では、腕に草を結んだら結婚したということになるんだわさと女副校長が言うと、オラの村では嫁さんが足に草をくくりつけたらもうだれも手を出しちゃいけねーてっことになってるんだと大学院学部長がこたえるという具合で、ほとんどの人がついこの間まで、村で暮らしていたので、実に面白いです。

お墓がない。もっと、すさまじいのは、人が死んだ時です。先日、大学院学部長の姪が 事故でなくなったのですが、葬儀をどうするかという説明をしてもらいましたが、その学部長の村のしきたりでは、くさむらに死体を置いてくるそうです。そうするとハイエナが食べてくれるのだそうです。他の部族でも似たようなもので、墓石も何もなく単に埋めるというのが多く、灰にして捨てるというのもありました。たしかに、ナイロビでも白人のお墓は教会のそばにあったりするのですが、田舎の村にいくとお墓らしいものはほとんどありません。みんな、自然に戻してそれでおわりということらしいです。日本などどんな田舎に行ってもお墓だけはあちこちにあるものですが、こちらでは、そのような習慣は、ナイロビに住んで西洋化した家族でない限り、ほとんどないようです。もっと詳しく調べる必要がありますが、これは将来の論文のテーマに残しておきましょう。

北村行伸
ナイロビ、ケニア