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プロジェクト研究: 平成24年度採択課題一覧

研究課題 ロシア企業の組織と経営行動に関するミクロ実証分析
研究代表者 杉浦史和(帝京大学)
研究分担者 安達祐子(上智大学), 岩﨑一郎(一橋大学経済研究所), 堀江典生(富山大学極東地域研究センター), 溝端佐登史(京都大学経済研究所), 道上真有(新潟大学)
成果報告 我々は現代ロシア企業の行動様式解明という共通テーマに対して各自の興味に沿ってアプローチしたほか、 報告媒体も学会の他、市民参加の公開講座やビジネスマンの参加が多いシンポジウムにまで及び、多様かつ多大な成果を上げた。 我々の成果は公開講座のタイトル「変わるロシア、変わらないロシア」に集約される。 ロシア企業の資金調達行動には相互不信の様相が色濃く見られるが、それを克服するために企業連合を組んだり、多国籍化したりするほか、 特に危機的な事態に際して関係企業の整理統合などをも積極的に活用するという「変革するロシア企業」の実態が明らかになった。 しかし同時にロシア企業はソ連時代から受け継いだ労務管理制度や福利厚生の仕組みを現在でも活用しており、 それは「変わらないロシア企業」だが、そこには一定の合理性が見いだされていることなどが議論された。

研究課題 日本における消費者行動の実証分析:税制、家計行動、世帯内資源配分
研究代表者 坂本和靖(慶應義塾大学大学院)
研究分担者 北村行伸(一橋大学経済研究所), 宮崎 毅(明海大学)
成果報告 北村・宮崎(2013)では、1984年から2009年の25年間に、税制や社会保障制度等の変化が、家計経済にどのような影響を与えたかを考えた。 まず、家計に関する簡単なミクロデータ分析と、不平等と貧困の計測や消費税、所得税の経済理論をサーベイした。 また、所得税率の変化に対する弾性値の推定や、所得再分配の実態の計測、消費需要の価格弾力性の推定も行った。 また、世帯内における資源配分の不平等を考慮した計測では、2000年代以降、夫妻の消費が同額となる世帯数が増えた(特に共働き世帯)。 妻の相対的な賃金が高まることで、妻のバーゲニングパワーが高まり、より多くの自由裁量消費を享受しうる可能性が示唆された。

研究課題 ロシアにおける労働市場・家計消費・男女分業と「生活の質」
研究代表者 大津定美(神戸大学名誉教授)
研究分担者 五十嵐徳子(天理大学), 雲 和広(一橋大学経済研究所), 武田友加(一橋大学経済研究所)
成果報告 本研究は,体制移行を経たロシアにおける労働市場・家計消費・ジェンダー関係という要因によってロシアの「生活の質」を検討することを意図した. 具体的には,ロシア独自の家計調査データRussia Longitudinal Monitoring Survey (RLMS)の個票を用い, 家庭内/社会的分業・労働市場・消費行動等に関するミクロ(個人/家計)レベルの要因と,その帰結としての個人/家計レベルの「生活の質」との関係を, 労働経済学・家計の経済学そして社会学的視点から分析した.

研究課題 2008SNAとその適用の問題点の総合的検討
研究代表者 作間逸雄(専修大学)
研究分担者 久保庭眞彰(一橋大学経済研究所), 宇都宮浄人(関西大学), 櫻本 健(立教大学), 山内 暁(専修大学), 李 潔(埼玉大学)
成果報告 国民経済計算の最新の国際基準である、SNA2008、あるいはその実施、 あるいは、周辺にある経済統計の諸問題等をめぐって研究会(国民経済計算研究会)を3回開催した。 場所を含めて書くと、それは、2012年7月7日(専修大学神田キャンパス)、2012年11月2日・11月3日(関西大学千里山キャンパス)、 2013年2月14日(一橋大学国立東キャンパス)であり、多くの報告とそれをめぐる活発な議論が行なわれた。 日本各地からの参加者とともに、SNA理解を深め、問題点の認識を共有することができたと考えている。

研究課題 International Comparative History of Occupational Structure
研究代表者 攝津斉彦(武蔵大学)
研究分担者 斎藤 修(一橋大学名誉教授), Leigh Shaw-Taylor(ケンブリッジ大学), 宇佐美好文(東京大学大学院), 朴 二澤(高麗大学)
成果報告 2012年度前半は、各国の職業構造にかんする章の完成を目指し各自作業をおこなった。 9月13日から15日にかけて一橋大学佐野書院で開催された Asian Historical Economics Conference (AHEC) にて、 Employment, Sectoral Change and Economic Development と題するセッションを組織し、 副業の重要性をセッションの軸に据え、日本とインドにかんする研究報告をおこなった。 また、2013年3月12日には、インドの International Institute of Population Science の研究者を招聘し、 インドの長期的な人口データにかんする最新の研究成果を報告してもらい、情報交換をおこなった。

研究課題 高頻度データを用いた資産市場のミクロ構造とボラティリティの計量分析
研究代表者 大屋幸輔(大阪大学大学院)
研究分担者 大森裕浩(東京大学大学院), 渡部敏明(一橋大学経済研究所), 佐藤綾野(高崎経済大学), 鈴木久美(山形県立米沢女子短期大学), 長倉大輔(慶應義塾大学), 生方雅人(釧路公立大学), 竹内明香(上智大学)
成果報告 Realized Volatility (RV) のマイクロストラクチャーノイズや取引の無い時間帯によるバイアスを考慮して RV と日次リターンを同時モデル化する Realized Stochastic Volatility モデルや Realized GARCH モデルがボラティリティの予測やオプション価格の導出においてパフォーマンスが高いことを明らかにした。 また、リターンの分布の裾の厚さと非対称性についても分析を行った。 さらに、PIN (Probability of Informed Trading)モデルを用いて日本の株式市場の日中の情報の非対称性や流動性の変化を明らかにした。

研究課題 企業の業績および財務内容と賃金構造の関係に関する計量経済分析
研究代表者 出島敬久(上智大学)
研究分担者 伊藤伸介(明海大学), 木下千大(一橋大学経済研究所), 坂田幸繁(中央大学経済学部), 栗原由紀子(中央大学経済学部), 村田磨理子((公財)統計情報研究開発センター・研究開発本部)
成果報告 本研究では,経済産業省『企業活動基本統計調査』や『法人企業統計調査』等の個別データを用いてパネルデータを作成した上で, 企業の業績や財務内容が賃金および雇用量に及ぼす影響を検証した。 本研究によって,産業や地域をコントロールした場合においても,事業の利益率が高いほど, 全般的には雇用を増し,賃金の総額を増加させることが定量的にも確認できた。
なお,本研究の成果の一部については,研究集会「ミクロデータから見た日本経済の構造」(平成25年3月開催)で発表しただけでなく, 一橋大学経済研究所ディスカッション・ペーパー等で公表する予定である。

研究課題 世界金融危機と日本と中国の株式市場
研究代表者 張 艶(福岡女子大学)
研究分担者 浅子和美(一橋大学経済研究所), 劉 振涛(中国厦門大学)
成果報告 本プロジェクトでは、日本と中国の株価連動性について分析し、世界金融危機の日中の株式市場に対する影響を考察することによって、 両国の株式市場の価格形成を明らかにした。 世界金融危機発生後、日本の株式市場は世界金融危機の影響を大きく受けたといえる。 中国については、世界お金融危機の時期より、株式市場が成立した直後の1990年代前半ごろに株価の変動がもっと激しかった。 また、世界金融危機発生後、日本と中国の株価連動性は高まったことが分かった。

研究課題 国際比較可能な西アフリカ稲作農家パネルデータの作成と分析
研究代表者 橘 永久(千葉大学)
研究分担者 櫻井武司(一橋大学経済研究所), Fred K. Nimoh(クワメ・ンクルマ科学技術大学)
成果報告 2013年1月までに、ガーナ・アシャン手州での米作農家64軒・トウモロコシ作農家65軒の家計調査を終えた。データ入力作業を進めている段階である。 同じく2013年1月に、2011年に実施したアシャン手州4カ村でのセンサスデータの整備を終えた。 2001年センサスと比較を行い、 a) トウモロコシ作農民はこの10年間で激減した。 b) 米作農民数は、10年間でほとんど変動が無かった。 c) 北部からの移民以外の米作農民が増えるなど米作農民の特徴には大きな変動があった、の3点を示した。

研究課題 公的医療保険制度の評価と費用負担に関するミクロ計量分析
研究代表者 浦川邦夫(九州大学大学院)
研究分担者 齋藤隆志(九州国際大学), 小塩隆士(一橋大学経済研究所)
成果報告 我が国の現行の公的医療保険制度に対する人々の評価について、選択型実験の手法を用いて検証を行った。 主な結果として、市町村国保加入者や家族の健康度が低い被験者が、健康保険の給付範囲の拡大を支持している(限界支払意思額が高くなる)ことが示された。
この他、主観的厚生(幸福感、健康感、仕事満足度)に影響を与える要因 (個人の社会経済属性、格差に対する意識、地域要因)についての検証や過去の先行研究のサーベイを行った。

研究課題 Reassessing China's Economic Performance Using Tight Bounds of 'True' Index Numbers
研究代表者 Carlo MILANA (University of London)
研究分担者 Harry Xiaoying WU(一橋大学経済研究所)
成果報告 本研究には二つの局面がある。 まず一つは現存する資料に基づいて中国の制度上の問題点を調査し、中国がどのように成長してきたかを理解することにある。 この結果は、Stratejic Change,2012の雑誌論文となった。 第2の局面は、指数を使い、制度上の要因を考慮しつつ中国経済のパフォーマンスを再評価することである。 暫定的な産業別実証分析の結果は我々のかんがえを裏付けることとなった。 この1年のプロジェクトにおいて、今後の研究の基礎を築くことができ、たいへん有意義であったと言える。