学問や将来の進路として金融・ファイナンスに興味を持つ、学部生や一般の人が最初に手に取る本として、個人的に一番いいと思うのは、以下の本である。
『証券投資の思想革命―ウォール街を変えたノーベル賞経済学者たち』
ピーター・L.バーンスタイン【著】 青山 護+山口 勝業【訳】
出版社:東洋経済新報社
これは、ファイナンスという学問の発展に大きく寄与した人達の偉人伝で、かなりの程度まで、ファイナンスが分かった気にさせてくれる本だ。過去に指導した学生の経験談からすると、就職活動などにも役立つ本だと思うので、お勧めしておく。厳密にはファイナンスの本ではないけれど、同じ著者・出版社の『リスク―神々への反逆』も、非常に面白い本。
シリアスな教科書を読む気にはならないけれど,自分の人生設計に役立つようなファイナンスの知識を得たいという人へのお勧めは、
『シーゲル博士の株式長期投資のすすめ』 ジェレミー・シーゲル【著】 笠原高治【訳】
出版社: 日本短波放送
『ウォ−ル街のランダム・ウォ−カ−: 株式投資の不滅の真理』
バ−トン・マルキ−ル【著】 井手正介【訳】
出版社: 日本経済新聞社
の2冊。有名なのはマルキールの方ですが、個人的にはシーゲルの方が分析の視点が新しいし、全然良いと思います。しかも、安いし。
もう少し教科書っぽい中では、株式市場についての本ではないけれど
『企業財務入門』 井出正介+高橋文郎【著】 出版社:日本経済新聞社
の第一部が、比較的過不足無く、ちゃんとまとまっている。もう少し、実証・数量的なアプローチに興味のある人は、
『相場を科学する―なぜ上がり、なぜ下がるのか』
倉都 康行【著】 出版社:講談社ブルーバックス〈B‐916〉
などを、読んで見るといいでしょう(どうも出版社は最近、廃刊にしたらしいけど)。
本格的な本が読みたいという場合には、 と見回してみると、残念ながら日本人の書いた教科書の類に、良い本は皆無といって良い。理由は明らかで、アメリカの教科書が、経済学部やビジネス・スクールの授業での講義ノートの蓄積をもとにして書かれているのに対して、日本の場合、大半が授業で試したことのない書きおろしであるため、結局、読む側としては使えない本がデキあがってしまうのだ。これは、必ずしもファイナンスに限ったことではなく、経済学全般に言えることではあるのだけれど、教えた経験のない実務家が書いた本が多いファイナンス業界では、特にこの傾向が酷い。したがって、勧める本は翻訳モノが大半になってしまう。
学部生向けの本格的な教科書としては、良い本はいろいろあるけれど、とりあえず、
『よくわかるファイナンス』 久保田
敬一 【著】
出版社:東洋経済新報社
『現代ファイナンス論: 意思決定のための理論と実践』
ツヴィ・ボディ+ロバ−ト・マ−トン【著】
出版社: ピアソンエデュケ−ション
INVESTMENTS (fourth
edition) by Bodie, Kane, and Marcus, Richard Irwin.
を勧めておく。久保田さんの本・マートン達の本は、多分アメリカの水準では少し数学的過ぎるんだけれど、逆に日本人には丁度良いかもしれない。後者は、アメリカのトップ・ビジネス・スクールで、一番ポピュラーなテキスト。ちなみに、ボディさんとBodieさんは同一人物です。