論文・著書 2003

対日・対外直接投資と製造業企業の生産性
−企業活動基本調査個票データによる実証分析−

村上友佳子・深尾京司(ファカルティフェロー)

2003/10(ESRI Discussion Paper Series No.68)

本文(PDF/291K)図(PDF/414K)表(PDF/115K)


要旨
近年、対内・対外直接投資が急拡大している。経済のグローバル化の一部であるこのような構造変化は、日本の製造業に様々な影響を与えると予想される。標準的な国際経済学によれば、直接投資とは経営資源、具体的には研究開発によって蓄積された技術知識ストック、広告活動によって蓄積された販売ノウハウ、優れた経営能力、等の移転を伴う国際資本移動と考えられる。従って、対内直接投資は日本の生産性を上昇させるかも知れない。また、対内・対外直接投資は国内労働市場にも影響を与えると予想される。例えば、対外直接投資は生産工程の海外移転を通じて、日本国内において企業の生産労働者に対する需要を減少させ、非生産労働者に対する需要を高める可能性がある。また、外資系企業は雇用量を伸縮的に調整することを通じて、終身雇用制をはじめとした日本の雇用慣行を変化させるかもしれない。本論文では企業活動基本調査の個票データを利用した実証分析によりこれらの問題について研究した。
  外資系企業の全要素生産性は日本企業と比較して約10%高い。また、外資系企業の生産拡大のほとんどは買収・資本参加によって行われているが、外資系に買収・資本参加された場合にも日本企業の全要素生産性が上昇する。一方、外資系企業の方が雇用の調整速度が速いことが分かった。
  対外直接投資については、海外生産を拡大した企業ほど、雇用に占める生産労働者の割合を低下させていることが分かった。また、生産性の高い企業ほど、海外への生産移転を行う傾向があることも明らかとなった。

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