論文・著書 1997
対日直接投資はなぜ少ないか:系列、規制が原因か
中村吉明・深尾京司・渋谷稔
1997/1(RIETI 研究シリーズ No31)
本文(PDF/4330K)
要旨
日本の対内直接投資は欧米諸国と比較して非常に低水準である。また、日本
の対外直接投資残高と対内直接投資残高の比率は1994年で14倍の開きがある。
本稿では、対日直接投資がなぜ少ないのか、また、それは「系列」、規制とど
のような関係があるのか、さらに、外資導入は日本の輸入を増やすことができ
るのか、といった議論に応えるべく、従来の実証研究では使われていなかった
3桁分類の産業別データ等を用いて分析を試みた。分析の結果、第一に、売上
高等からみた外資系企業の活動の阻害要因は「系列」の存在によるものではな
いこと、第二に、対日直接投資に関して現在、規制のある産業ほど外資系企業
の売上高は大きい傾向があるという結果が得られた。第三に、在日米系現地法
人の活動と米国の対日輸出の関係を分析した結果、販売現地法人を含めた全在
日現地法人の活動でみると、その活動の拡大は対日輸出を増やすのに対し、生
産現地法人の純生産の拡大に限って考えると対日輸出をむしろ減らすという結
果が得られた。すなわち、在日「生産」現地法人の優遇は、日本の輸入を減少
させるが、在日「販売」現地法人の優遇は、輸入促進に効果的との結論が導き
出される。ただし、この場合でも、輸入の拡大は、長期的に国内雇用の縮小に
有意に相関するので留意する必要がある。