研究計画概要

研究トピックの題名

企業の資金繰りに関する経済分析

論文執筆予定者

氏名 所属
植杉威一郎 一橋大学経済研究所・准教授
内田浩史 神戸大学経営学研究科・准教授
小野有人 みずほ総合研究所・主席研究員
小塚荘一郎 上智大学法学部・教授
坂井功治 一橋大学経済研究所・専任講師
Gregory Udell Kelley School of Business, Indiana University

作業担当予定者

氏名 所属
植杉威一郎 一橋大学経済研究所・准教授
内田浩史 神戸大学経営学研究科・准教授
小野有人 みずほ総合研究所・主席研究員
小塚荘一郎 上智大学法学部・教授
坂井功治 一橋大学経済研究所・専任講師

計画概要

企業の負債サイドに注目し、企業の資金繰りはどのように決まっているのか、資金繰りを悪化させる企業はどのような企業なのか、といった資金繰りに関する分析を行う。具体的には(1)企業と銀行との関係、(2)企業と貸金業との関係、(3)企業間の関係、という3つの関係に注目し、それぞれどのような関係が銀行借り入れ、ノンバンクからの借り入れ、企業間信用、という企業の資金調達方法に影響しているのかを分析する。(3)については企業の資産側(売掛金・受取手形)にも注目し、資金提供側についても分析する。

(1)については、これまでに多くの研究が明らかにしてきた銀行と借り手の密接な取引関係のメリット(リレーションシップバンキング)について、詳細なデータを用いてさらに詳しく検証したい。具体的には、大企業と中小企業とでリレーションシップバンキングのあり方がどのように違うのか、といった分析が考えられる。リレーションシップバンキングについてはDegryse, Kim and Ongena(2009)Microeconometrics of Banking (Oxford University Press)などで詳しく紹介されている。日本では銀行借入が企業の主要な資金調達方法であるだけに、(1)は、(2)、(3)の分析におけるベンチマークにもなる。

(2)については、貸金業からの借入に頼る企業はどのような特徴があるか、銀行とどのような関係にあるかといった点を明らかにするとともに、貸金業に対する一律上限金利規制の導入・総量規制の導入の影響についての分析を行うことが考えられる。貸金業者の多くが事業者向けの貸出を行う中で、改正貸金業規制法の施行により、今後貸出金利や債務者一人当たりの借入可能額に上限が設けられると見込まれている。金利と量の両方に関する規制の導入により、中小企業の資金調達環境はどのように変化するのかを明らかにしたい。筒井・晝間・大竹・池田(2007)「上限金利規制の是非:行動経済学的アプローチ」『現代ファイナンス』などを参考に、行動経済学のアプローチの導入についても検討したい。

(3)については、単に企業間信用受信の決定を調べるだけではなく、受信と与信との関係を調べることによって、企業間信用を通じて企業が実質的に行っている金融仲介活動を分析したい。具体的には、純与信額でみて資金の貸し手となっている企業はどのような企業か、借り手となっている企業はどのような企業か、仕入先・販売先(得意先)の特徴や取引関係・金融機関借入の状況によって受信や与信がどのように変化するのか、といった点に注目したい。こうした分析は企業の資金繰りの決定要因を明らかにする上で非常に重要である。資金繰り調整において中心的役割を果たしている企業はどのような企業なのか、そうした企業は金融機関とどのような関係にあるのか、といった特徴が明らかすることで、経済全体で資金繰りに問題が発生した場合にどのような企業に対してどのように対策を講じればよいのか、といった政策的インプリケーションを導きたい。知りうる限りでは、企業間信用の受信与信両面に注目した分析はBoissay and Gropp(2008 discussion paper)を除いて行われていない。ただし、企業による金融仲介については日本の商社金融に関する研究がいくつか行われている。

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