研究計画概要

研究トピックの題名

企業と金融機関の結びつきと企業パフォーマンス

論文執筆予定者

氏名 所属
小川一夫 大阪大学 社会経済研究所 教授
得津一郎 神戸大学 大学院経営学研究科 教授

計画概要

企業と金融機関は資金の貸出・借入関係以外にさまざまな関係を通じて結びついている。例えば、金融機関(企業)は企業(金融機関)の株式保有を通じて株主関係にある。また、企業は金融機関に預金を預けており預金者である。さらに金融機関は、取引先や経営計画に関する情報を企業に提供している。このような種々の関係がどのような形で企業の生産活動、資産選択行動に影響を及ぼし、それが企業のパフォーマンスに対してどのような影響を及ぼすのか、定量的に明らかにすることが本研究の目的である。また、90年代後半の金融危機時のように、金融機関の財務状況が悪化し、上記の関係のいずれかが損なわれた場合に、その関係がどのような形で代替され、それが企業のパフォーマンスに与える影響についても明らかにしていきたい。

研究分担者は、すでに企業のメインバンクの不良債権比率が上昇した場合に、企業の設備行動、雇用、流動性に対してどのような影響が及ぶのか、実証的な分析を行ってきた(小川一夫「メインバンクの財務状況と企業行動:中小企業の個票データに基づく実証分析」『経済研究』Vol.59、No.1、2008年1月、pp.1-15)。この研究ではもっぱら貸出・借入関係を通じた影響に分析が限定されていたが、企業と金融機関のその他の関係がどのように変化し、それが企業行動に与える効果については明示的にとらえることができなかった。本研究では貸出・借入関係以外の関係についても分析を拡充していきたい。
中小企業と金融機関の関係についてはリレーションシップ・バンキングの重要性が指摘されているが、金融機関の財務状況が悪化した場合に、リレーションシップ・バンキングのどのような機能が損なわれるのか、またその機能がどのような形で代替されるのか、この方向の研究は中小企業政策に対して重要な政策インプリケーションをもたらすものと期待できる。

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