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論文要旨

Vol. 73, No. 3, pp. 225-253 (2022)

『外出・在宅活動へのケイパビリティ・アプローチの応用の試み(2) --『A市外出に関する調査』より--』
神林 龍 (一橋大学経済研究所), 後藤 玲子 (帝京大学経済学部), 小林 秀行 (労働安全衛生総合研究所), 王 薈琳 (労働安全衛生総合研究所)

東京都近郊A市の高齢者の外出活動と在宅活動について,高齢者,障碍者,要支援・要介護認定者で利用能力とケイパビリティを比較した.主な観察結果は次のとおりである.外出活動・在宅活動に関連するケイパビリティは,健康上大きな問題のない一般高齢者でさえ毀損しているが,障碍者や要支援・要介護認定者など移動困難者ではその度合いはより大きい.ケイパビリティの毀損の一部は,もともと十分な利用能力が涵養されていないことに起因している可能性が高い.この利用能力の剝奪度合いとケイパビリティの毀損度合いの関係は,同じ移動困難者である,障碍者と要支援・要介護認定者の間でも異なっている可能性がある.両者は異なる集団として行政に認識されているが,両グループの差が政策手当が異なることの結果なのかをさらに検討する必要があるだろう.