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論文要旨

Vol. 73, No. 3, pp. 193-209 (2022)

『等級制度が政府調達の効率性に与える影響』
佐藤 峰 (名古屋市立大学大学院経済学研究科)

本稿は,企業の入札への自由な参入を制限する等級制度が政府調達に与える影響を分析する.各国の政府調達では能力の異なる企業同士を同じ条件で競争させない制度があり,日本では等級制度がそれにあたる.しかし,このような制度が政府調達に与える影響について先行研究では様々な見解がある.そこで,本稿では,2013 年度に中国地方整備局の一般土木工事で等級区分が統合された事例を用いてDifference-in-differences推定を行い,以下の点を明らかにした.(1)等級区分統合によって政府調達の効率性は総合評価方式ベースで約1.7%改善する.(2)等級区分統合による政府調達の効率性の改善は,旧上位等級入札のみでみられ,旧下位等級入札ではみられない.このことは,現在の等級制度のあり方やその運用が,政府調達に非効率性を発生させていることを示唆する.