本稿では違法カルテル時の企業行動についての分析を行う.日本のセメント産業における北海道でのカルテル事件を例として取り上げ,まず,産業組織論の分野で伝統的に使用されるモデル選択を使って,カルテルが検出できるかを検証した.モデル選択の結果,これまで使用されてきた簡便なカルテルモデルは支持されず,現実のカルテルの行動を説明できないことが分かった.次に,カルテルがどのような行動を取っていたのかをカルテル時の情報とカルテル後に実施された政策を利用して明らかにした.その結果,カルテルは徐々に行動を変化させていたことが明らかになり,この行動は違法カルテルの理論予測と整合的であることが分かった.