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論文要旨

Vol. 69, No. 4, pp. 328-345 (2018)

『生産性分析における労働投入の測定 --派遣労働市場からの知見--』
川口 大司 (東京大学大学院経済学研究科・経済学部)

生産性分析において労働投入の異質性をとらえるため賃金を用い労働投入の効率単位をとらえることが行われる.しかしながら労働の限界生産物価値と賃金は労働・財市場の競争環境に応じて系統的に乖離しうる.本論文では労働の限界生産物価値の代理指標である派遣料金と派遣労働者に支払われる賃金の双方が観察可能な派遣労働市場を例にして,市場の競争環境が労働の限界生産物価値と賃金の乖離に与える影響を分析した.厚生労働省による労働者派遣事業報告書の事業所レベル個票(2010-2014)を用いた分析は,地方の都道府県において市場集中度が高くなる傾向があり,派遣料金と賃金の差額が大きくなる傾向があることを示した.様々な特定化の下で推定を行っても,推定結果は頑健であり,生産性分析にあたり賃金を用いて労働投入の効率性単位をとらえようとする際には市場の競争環境を考慮する必要があることが示された.