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論文要旨

Vol. 68, No. 2, pp. 114-131 (2017)

『管理職における男女間格差 --日本の従業員と企業のマッチングデータに基づく実証分析--』
馬 欣欣 (一橋大学経済研究所), 乾 友彦 (学習院大学国際社会科学部), 児玉 直美 (一橋大学大学院経済学研究科)

本稿では,労働政策研究・研修機構が2012年に実施した「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」における企業調査票,管理職調査票,一般従業員調査票を活用し,企業と雇用者(管理職,一般従業員)のマッチングデータを構築し,日本の正社員における管理職確率の男女間格差に関する実証分析を行った.得られた主な結論は以下の通りである.第1に,女性の管理職である確率には,人的資本要因(経験年数,学歴,勤続年数),家族要因(子どもあり),仕事要因(労働時間,昇進意欲,仕事に関する意識)が影響を与えることが確認され,欧米を対象とした先行研究と同様な結果が得られた.また,企業属性要因(業種,組合,社員における女性の割合,正社員における管理職の割合など),及び制度・政策要因(ポジティブ・アクション施策,ワーク・ライフ・バランス施策,遅い昇進パターンなど)が女性の管理職確率に大きな影響を与えることが判明した.第2に,管理職である確率の男女間格差が生じた要因に関しては,要因分解の結果によると,人的資本要因における量の差のみではなく,差別的取扱いが,原因であることが示された.