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論文要旨

Vol. 67, No. 4, pp. 289-306 (2016)

『国際経済における不等価交換』
吉原 直毅 (マサチューセッツ大学アマースト校経済学部), 金子 創 (慶應義塾大学経済学部)

交易の利益を伴う自由貿易の下での先進国と途上国の間での不等価交換の生成原理について考察し,近年の研究成果を概観する.ヘクシャー=オリーン=サミュエルソン貿易理論と同様に,全ての国民経済は生産技術に関する共通の知識を有するが,各国の資本賦存の違いによる実質的にアクセス可能な技術の集合に関する違いが生ずる国際経済環境の下で,異時点間の資源配分と(国際)市場価格の時系列として,経済均衡が定義される.その下で,第一に,Yoshihara and Kaneko (2016a, 2016b)による,財市場は国際化されているものの資本や労働の国際移動の無い完全競争的国際経済の下での,富の豊かな国と富の貧しい国との間での搾取関係の生成と継起性に関する特徴付け研究について,論じる.第二に,Veneziani and Yoshihara (2016)による,財市場に加えて資本貸借市場も国際化されている完全競争的国際経済の下で,富の不均等に起因する,搾取関係を伴う階級構造の生成に関する特徴付け研究について,論じる.