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論文要旨

Vol. 65, No. 4, pp. 332-344 (2014)

『中高年のメンタルヘルス —「中高年者縦断調査」によるパネル分析—』
小塩 隆士 (一橋大学経済研究所)

本研究の目的は,厚生労働省「中高年者縦断調査」の個票データを用いて,中高年のメンタルヘルスがどのような要因によって左右されるかを調べることである.中高年のメンタルヘルスには,所得・就業状況や婚姻関係,家族との同居,社会活動への参加など,社会生活におけるさまざまな要因が関係することが知られている.さらに近年では,中高年のメンタルヘルスに対する重要なリスク要因として,家族介護に対する注目も高まっている.本研究では,中高年のメンタルヘルスに対してこうした要因がどこまで重要なのか,時間によって変化しない個人属性の影響を制御した固定効果モデルを用いて分析する.本研究の推計結果によると,男女いずれにおいても,家族介護に携わることが中高年のメンタルヘルスにとって最も大きなリスク要因になっていることが分かった.さらに,それ以外の要因とメンタルヘルスとの関係が男女間で大きく異なることも明らかになった.