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論文要旨

Vol. 63, No. 1, pp. 17-27 (2012)

『民間機関による著作権保護 ――日本音楽著作権協会のゲーム理論的分析――』
新井 泰弘 (青森公立大学経営経済学部)

本稿では音楽市場における民間機関の著作権保護についてゲーム理論的なフレームワークを構築し,作曲家が楽曲の違法利用を防止するために自発的に著作権協会を組織した場合,社会厚生にどのような影響を与えるか考察を行った.日本音楽著作権協会(JASRAC)が現実に作曲家との間に締結している信託契約を考慮に入れ,作曲家の自発的参加と協会内における利潤分配交渉を含む2段階ゲームを定式化することで次の結論を得ることができる.
 まず,取締費用がそれほど高くなく,著作権協会に参加する作曲家のパフォーマンスの差が十分大きい場合,著作権協会の存在により社会厚生が増加することが示せる.次に全作曲家が著作権協会に参加するならば,著作権協会が楽曲使用料を統一に設定する方が,著作権者に楽曲利用料を決定させるよりも社会的に望ましい事が示せる.