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論文要旨

Vol. 62, No. 3, pp. 193-208 (2011)

『メガ企業の生産関数の形状--分析手法と応用例--』
渡辺 努 (一橋大学経済研究所, 東京大学大学院経済学研究科), 水野 貴之 (筑波大学大学院システム情報工学研究科), 石川 温 (金沢学院大学経営情報学部), 藤本 祥二 (金沢学院大学経営情報学部)

本稿では生産関数の形状を選択する手法を提案する。世の中には数人の従業員で営まれる零細企業から数十万人の従業員を擁する超巨大企業まで様々な規模の企業が存在する。どの規模の企業が何社存在するかを表したものが企業の規模分布であり,企業の規模を示す変数である Y (生産)と K (資本)と L (労働)のそれぞれはベキ分布とよばれる分布に従うことが知られている。本稿では,企業規模の分布関数と生産関数という 2 つの関数の間に存在する関係に注目し,それを手がかりとして生産関数の形状を特定するという手法を提案する。具体的には,KL についてデータから観察された分布の関数形をもとにして,仮に生産関数がある形状をとる場合に得られるであろう Y の分布関数を導出し,データから観察される Y の分布関数と比較する。日本を含む25カ国にこの手法を適用した結果,大半の国や産業において,Y,K,L の分布と整合的なのはコブダグラス型であることがわかった。また,Y の分布の裾を形成する企業,つまり巨大企業では,KL の投入量が突出して大きいために Y も突出して大きい傾向がある。一方,全要素生産性が突出して高くそれが原因で Y が突出して大きいという傾向は認められない。