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論文要旨

Vol. 62, No. 2, pp. 166-187 (2011)

『家計の脆弱性と回復力--ザンビアの事例--』
櫻井 武司 (一橋大学経済研究所), 那須田 晃子 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生), 木附 晃実 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生), 三浦 憲 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生), 山内 太郎 (北海道大学大学院保健科学研究科), 菅野 洋光 (東北農業研究センター)

本論文は,既存研究ではほとんど扱われてこなかったショック後の消費水準の回復に焦点をあて,回復の有無・速度や回復を促す要因を分析した.ザンビアの南部州で2007年11月から2009年12月まで実施した家計調査に基づく月次のパネルデータを利用し,消費成長関数を推計し,007年12月に発生した大雨の影響を,家計固有のショックによる部分と村落レベルのショックによる部分とに分けて計測した.調査対象農家を牛や山羊などの家畜保有の多寡で富裕層と貧困層に分割した結果,富裕層では大雨ショックによる消費水準の低下が貧困層よりも顕著であるが,富裕層の方がその後の長期的(ショック後1年半程度)な回復速度が速いことがわかった.つまり富裕層の方が貧困層より回復力が強い.他方,貧困層でも消費水準の低下が確認できるが,消費水準の有意な回復が見られないため,貧困の罠に捕らわれたと考えられる.