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論文要旨

Vol. 62, No. 2, pp. 153-165 (2011)

『村落レベルの集計的ショックに対する家計の脆弱性--パキスタン農村部における自然災害の事例--』
黒崎 卓 (一橋大学経済研究所)

村落内での相互保険では十分にカバーしきれない,ローカルな集計的リスクという性格を持つ自然災害の家計へのインパクトについて,パキスタン農村部の2時点家計パネルデータを用いて定量的に分析した.2時点間での家計消費変化が,村落レベルの洪水・旱魃というショック,およびけが・病気といった家計固有のショックに対してどう反応したかを,地域ごと・家計タイプごとに比較した結果,すべてのタイプのショックを和らげる効果を農地所有や制度金融アクセスが持つことが判明した.また,3種類の外生ショックに対する消費低下の度合いがどのように農地・金融アクセス以外の家計属性ごとに異なるかは,ショックごとに違った様相を見せており,それを整合的に説明するには,信用市場を通じた異時点間資源配分と,村落内での相互保険によるリスクシェアリングの両方の要素を考慮する必要があることが示唆された.