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論文要旨

Vol. 61, No. 2, pp. 97-116 (2010)

『米国型EITCの日本への導入効果』
高山 憲之 (一橋大学経済研究所), 白石 浩介 (株式会社三菱総合研究所)

個人所得税に給付つき税額控除を導入しようという議論が日本でも高まりつつある.給付つき税額控除とは,収入や扶養家族数に応じて税額控除を適用し,さらに課税最低限以下の人には給付金を支給する仕組みである.中低所得者における租税・社会保険料負担を軽減したり子育てを支援したりすることを狙いとする.
 本稿では,給付つき税額控除を実証的に研究するためのマイクロシミュレーションモデル(JPITCモデル)を構築し,政策シナリオとして米国の2007年版EITC(勤労税額控除)を日本の所得税に適用した場合における税負担の変化を推計した.シミュレーション結果によると,米国型EITCの導入により,わが国世帯の1/4程度がその適用対象となり,その導入に必要となる財源規模は約1兆円と見込まれる.EITC適用額の大半は税額控除ではなくEITC給付である.EITC適用者の典型的イメージは,年齢層が30歳代ないし40歳代,年収は200万円前後,子供のいる人であり,彼らの所得税および社会保険料(医療・年金・介護)の負担はその適用によって実質的にほぼゼロとなる.