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論文要旨

Vol. 61, No. 1, pp. 47-67 (2010)

『類別名目実効為替レート指標の構築とパススルーの再検証』
塩路 悦朗 (一橋大学大学院経済学研究科・経済学部), 内野 泰助 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生, GCOEフェロー)

本稿では,為替変動が輸出入物価に与えるインパクト,すなわちパススルーの程度を再検証する.輸出入物価指数の総平均を用いた研究に代わり,類別の輸出入物価指数を使ったVAR分析を行う.類によって主要な貿易相手国が異なる,という事実を考慮すれば,通常の実効為替レート(すなわち国全体の貿易額を基に算出された,貿易相手国別の為替レートの加重平均) を用いることは必ずしも適切ではないと考えられる.このため,本研究では「類別名目実効為替レート(貿易額ウェイト)」という新しい系列を構築する.一方で,重要なのはどの相手国とどれだけ貿易したかではなく,どの通貨を用いて貿易が行われたかだ,という考え方もあり得る.そこで本稿ではIto, Koibuchi, Sato, and Shimizu (2009)にならって「類別名目実効為替レート(契約通貨ウェイト)」を計算した.これらを用いて1990年以降のデータについて再計測を行った結果,通常の名目実効為替レートを用いた場合と比較して類によっては結果が大きく変わることがわかった.