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論文要旨

Vol. 60, No. 3, pp. 193-204 (2009)

『不完全資本市場下での生産関数の推定について』
北村 行伸 (一橋大学経済研究所), 西脇 雅人 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生), 村尾 徹士 (一橋大学大学院経済学研究科大学院生)

ミクロレベルの生産関数を推定する際,Olley and Pakes (1996)によって提案された手法が広く用いられている.しかしながら,Olley-Pakes法は 暗黙に完全な資本市場の直面していることを仮定しており,企業が不完全な資本市場に直面しているときには係数推定値は一致性を持たない.多くの実証研究は,途上国経済はもとより先進国経済においてさえ,資本市場が不完全であることを指摘している.本稿では,Olley-Pakes法を,資本市場の不完全性下でもロバストな推計手法へと改良することを目的としている.改良された手法を用いて日本の企業レベルデータを用いて推計した結果,Olley-Pakes法は理論通りのバイアスを持つことが明らかになった.その大きさは産業ごとに異なるが,資本分配率で約8-43%と比較的大きなものであることがわかった.