HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 60, No. 2, pp. 156-162 (2009)

『チャネル間競争の下でのテリトリー制と経済厚生』
成生 達彦 (京都大学経営管理大学院), 池田 剛士 (神戸国際大学経済学部), 岡村 誠 (広島大学大学院社会科学研究科)

複数の流通チャネルの間で競争が行なわれている市場において,生産者と小売業者の行動を3段階ゲームとして定式化し,生産者が均衡においてテリトリー制を選択することを示す.さらに,テリトリー制が経済厚生に及ぼす効果について検討する.ある市場に立地する小売業者は,輸送費用を負担すれば,他の市場でも財を販売することができる.この輸送費用が十分に低い場合,市場間輸送によって小売業者数が増えれば,その市場の競争は激しくなり,小売価格は低くなる.逆に,輸送費がある程度高い場合には小売価格が上昇し,消費者厚生が悪化する.この状況でのテリトリー制の導入は,無駄な輸送を排除することによってチャネル(またはフランチャイズ料を徴収する生産者)の利潤を増加させると同時に,消費者厚生をも向上させるという意味で,パレート改善となる.