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論文要旨

Vol. 60, No. 2, pp. 126-139 (2009)

『農家世帯内の労働パターン―両大戦間期17農家個票データの分析―』
斎藤 修 (一橋大学経済研究所)

本論文では,両大戦間期の農家世帯内における労働時間の配分がどのようになされていたかを検討する.この予備的考察のために利用するのは,一橋大学の戦前期農家経済調査個票データベース・プロジェクトで作成中の,1931-41年の11年間を対象としたパネルデータの一部で,茨城・山梨・大阪・徳島の4府県における調査対象世帯17家族である.本稿は市場要因などに焦点をあてた経済学的な分析ではなく,農家世帯に特有の近接要因の分析に限定する.それらの要因のなかでもっとも重要であったのは,既婚女性であれば夫の,未婚の子供であれば父親または母親の労働時間であった.農家女性は,夫がより長時間働かなければならない状況となれば同じ割合で労働時間を増加させ,それに伴って家事にあてる時間を減少させていたのである.また,彼女らの労働時間供給行動には,日本の直系家族型家族周期の影響が有意にみられたことも明らかとなった.